墨が刻む、静かな時間

奈良の小さな工房で、墨が生まれている。
何世紀も前から、変わらないサイクルで。

手に刻まれる、漆黒の色。
それは生業の色。

墨を型にはめる職人の手

かじかんだ手で、生墨と向き合う。
一心不乱に向き合う。

あたかもそれは墨と対話しているかのように。

墨の製造は冬の寒い時期に限られる。
気温が上がると原料の膠が腐る。

春が来るまでが勝負。

墨は、すぐには完成しない。
煤を集め、膠と混ぜ、練り、寝かし、乾かす。
その工程のどれもが、急ぐことを許さない。

ゆっくりと出来上がった墨たちは、旅立ちを待つ。
生まれるまでの物語を持ち、これからの物語を紡ぐ。
誰かの日々を美しい墨色で彩るために。

錦光園
奈良県奈良市
https://kinkoen.jp/

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